2021/09/10
自転車屋の生き物歳時記 アキアカネ
9月10日
金曜日
自転車屋の生き物歳時記
アキアカネ
今朝は少ない群れだが
10匹ぐらい
いわゆる赤トンボが飛んでいる。
アキアカネやね。
アキアカネ
(秋茜、学名:Sympetrum frequens (Selys, 1883))は、
トンボ科アカネ属に分類されるトンボの一種。
日本では普通に見られる。
俗に赤とんぼと呼ばれ、
狭義にはこの種だけを赤とんぼと呼ぶことがある。
季節的な長距離移動がよく知られている。
日本特産種で、
大陸部では極東アジアからヨーロッパにかけて
広く分布する近縁種である
タイリクアキアカネ
S. depressiusculum (Selys, 1841)と置換する。
タイリクアキアカネは、
秋の後半に北西の季節風が吹き出す頃に、
日本列島に吹き寄せられたものが各地で記録されるが、
繁殖はしていないようで幼虫の発見例はない。
同様に人里でよく知られた赤とんぼには
ナツアカネ S. darwinianum (Selys, 1883)がある。
アキアカネは夏に一旦低地から姿を消し、
秋に成熟成虫が大挙して出現するのに対して、
ナツアカネは生活史を通じて低地から姿を消さない。
そのために
夏にも低地で見られる方に
ナツアカネの和名が与えられたのであり、
活動時期自体は両種にほとんど差はない。
ロシア、中国、朝鮮半島、日本に分布する。
平地から山地にかけて、
水田、池、沼、湿地などに生育する。
底質は泥で、
汚れた水質の環境に生育することが多い。
平地で孵化した未熟な成虫は夏に涼しい山地へ移動し、
成熟し秋になると平地に戻る。
終齢幼虫に達した段階のヤゴの体長は16-20 mm、
頭幅は6.5-8 mm。背棘が第4-8節にあり、
側棘が第8-9節にある。
日本では
小笠原諸島、沖縄県を除き各地に広く分布し、
奄美大島では過去に確認記録がある。
朝鮮半島から
タイリクアキアカネに混じって朝鮮半島タイプの
アキアカネの飛来が確認されている。
全長はオスが32-46 mm、メス:33-45 mm。
腹長はオスが19-29 mm、メス:21-30 mm。
後翅長はオスが25-34 mm、メス:26-34 mm。
オスは腹部第2節の下部に副性器(2次生殖器)があり、
成熟すると腹部が赤くなる。
メスは腹部が淡褐色のものと背面が赤いものがある。
顔面はオスが橙褐色で、メスが黄褐色。
オスは成熟しても頭部と腹部は赤くならない。
複眼は大きく、左右がくっ付き合って一続きとなり、
顔面の黒条の凹凸が目立たない個体が多い。
オスは第10節に連結交尾の際に
メスを捕獲するための尾部付属器があり、
メスには第8節下部に小さな生殖弁がある。
繁殖するのは
通常平地または丘陵地、
低山地の水田、池沼、溝などであるが、
まれに標高2000m代の高所からの羽化記録もある。
5月末から6月下旬にかけて
夜間に羽化した成虫は朝になると飛び立って水辺を離れ、1-2日間草に止まったまま体が十分固まるのを待つ。
その後近辺の樹林、植栽木などに集合して群れとなり、
4-5日間を摂餌に費やして様々な小昆虫を空中で捕食し、
長距離飛翔に必要なエネルギーの蓄積を行う。
十分に体力がついた個体は単独で、
あるいは群れを成して日中の気温が
20-25℃程度の3000mぐらいまでの
高標高の高原や山岳地帯へ移動して、
7月-8月の盛夏を過ごす。
未成熟成虫が水辺を離れて生活するのは
他のアカネ属の赤とんぼのみならず、
非常に多くのトンボに共通した習性ではあるが、
アキアカネの場合この移動が極端に長距離となる。
低温時における
アキアカネの生理的な熱保持能力は高く、
活動中の体温は外気温より10-15℃も上昇するが、
高温時の排熱能力は低い。
そのため暑さに弱く、
気温が30℃を超えると生存が難しくなり、
このことが季節的な長距離移動の原因と考えられている。
酷暑の年には移動先はより高い標高の地域となり、
冷夏の年にはそれほど高いところまでは
移動しないことが示唆されている。
なお、
夏の昼間の日差しが強い時間帯に、
止まっているアキアカネが逆立ちをするのは、
日光が当たる面積を減らし
体温の上昇を抑えるためと考えられている。
夏の間、
高地で摂食を続けている間に
生殖腺などの内部組織が発達、充実し、
最終的に体重が2-3倍にまで増加する。
昆虫などの節足動物は脱皮後に体の大きさは増大するが、それは消化管内にのみこんだ水や空気の圧力で
外側の外骨格だけを膨張させているため、
しばしば内部はすかすかの状態である。
そのため、
脱皮後は成長しないように思われがちだが、
実は外骨格の膨張に伴っていなかった
内部組織の成長が起こるのである。
十分成熟した成虫、
特に雄は体色が橙色から鮮やかな赤に変化し、
通常秋雨前線の通過を契機に大群を成して山を降り、
平地や丘陵地、低山地へと移動する。
成熟したオスは
朝に草地や樹上でメスを探しながら飛び回り、
日中には水辺の植物や地表に留まり縄張りを持ち、
メスを見つけると捕まえて交尾を行う。
雌雄が結合したまま飛びまわり、
稲刈りの終わった水田の水溜りのような
産卵適所を探索する。
このような浅い水溜りを発見すると、
近くの草むらや地面で午前中から正午過ぎの間に
約10分ほど交尾を行い、
交尾が終了するとやはり雌雄がつながったまま
水面の上に移動する。
産卵は水面の上で上下に飛翔しながら
雌が水面や水際の泥を腹部先端で繰り返し叩き、
その度に数個ずつ産み落とす。
産卵が終わると雌雄は連結を解き飛び去り、
夕方は単独行動を行うが
朝になると再び雌雄が連結して生殖活動に移る。
成虫は11月まで見られ、
中には12月上旬まで生き延びるものもいる。
卵は水中や湿った泥の中で越冬し、
春に水田に水をはる頃になると孵化し、
幼虫(ヤゴ)となる。
卵の期間は約半年で、
ヤゴの期間は3-6ヶ月程で1年1世代。
アキアカネのヤゴは、体は短めで、肢は比較的細長い。
頭部は横長で複眼は前側方に突出している。
ヤゴは田植え直後の水田に大発生する
ミジンコなどを活発に捕食して急速に大きくなり、
初夏の夜にイネなどによじ登って羽化する。
DNA解析により、
系統的に近い種であるタイリクアキアカネとの間で
雑種が確認されている。